地方分権改革推進委員会の第3次勧告における博物館法の見直しを受け入れないよう求める要望書



2010年1月23日

内閣総理大臣  鳩山由紀夫 殿

総務大臣    原口 一博 殿

文部科学大臣  川端 達夫 殿

文化庁長官   玉井日出夫 殿


日本歴史学協会 会長             高埜 利彦

日本歴史学協会 文化財保護特別委員会委員長  石山 久男



 多数の歴史学会が加盟し日本の歴史学界における最大の協議体となっている日本歴史学協会は、 文化財として全国各地に所在する遺跡の保存や、博物館の存在と機能のあり方に関しても強い関心をもちながら、 専門的研究の立場から国民的視野にも立ちつつ、今日まで歴史学の向上発展に大きく寄与してきております。
 昨2009年10月、地方分権改革推進委員会による第3次勧告がなされ、 そのなかに博物館法第12条の第一項から第三項にある博物館登録の要件(博物館資料・学芸員その他の職員・建物及び土地)について、 廃止または条例委任が盛り込まれていることを知りました。
 これらの要件は、博物館が歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等の分野における社会教育施設として機能していくための必要最低限かつ基本的なものであることは当然であると思われます。
 したがいまして、今回の勧告をうけ、もしも博物館登録の要件中、第一項から第三項が廃止または条例委任されるということになりますと、 自治体によっては、博物館法に規定されている「一般公衆の利用に供し、その教養、調査研究、レクリエーション等に資する」という博物館本来の目的と機能が大きく後退し、 地方・地域における文化的・学問的分野への関心が低下するばかりではなく、ひいては我が国全体の当該分野への影響も与えかねない状況が起こりうると考えられます。
 そもそも地方分権改革推進委員会の勧告は、「条例制定権の保障の範囲を「地方自治の本旨」の観点から設定するという意義を有する取り組みでもあり、 我が国の地方自治制度始まって以来の試み」と位置づけられております。
 しかし、今回の勧告にみられる博物館法の見直しについては、あまりにも問題を含んでいると言わざるを得ません。 かつて、1997年の地方分権推進委員会第2次勧告の「公立博物館の設置及び運用に関する基準」では、 それまで定められていた「学芸員・学芸員補の定数規定を廃止し、実情を踏まえた配置人数を決定できるように」弾力化をすすめ、 それ以降も「地方自治」「地方分権」の名のもとで、そうした「弾力化」の方向が強調されている傾向は否定できません。
 こうしたなかで博物館の現状といえば、各自治体では財政難などを理由として、学芸員の減少、資料収集や展示回数の減少など、 さまざまな博物館維持機能について不安定な状況が生じてきています。
 このことはまた、文化財保護法第1条に示されている、「文化財を保存し、且つ、その活用を図り、 もつて国民の文化的向上に資するとともに、世界文化の進歩に貢献することを目的とする」という意図および精神にも大きく反することになると考えます。
 博物館本来の目的と機能を維持することは、国と自治体の「責任」において、どの地域においても等しく国民に保障しなければならない重要な文化的事項の一つであると考えられます。
 よって、当協会として政府にたいし、今回の第3次勧告に示された博物館法の見直しを受け入れないよう、ここに強く要望いたします。 さらに今後、政府として責任ある対応をしていただきたく重ねて要望いたします。

以上