公文書館法の専門職員に係る附則2の撤廃を求める要望書


内閣総理大臣 岸田文雄 殿

衆議院議長 細田博之 殿

参議院議長 尾辻秀久 殿


内閣府が所管する「公文書館法」(昭和62年<1987>成立)は、第四条第二項で「公文書館には、館長、歴史資料として重要な公文書等についての調査研究を行う専門職員その他必要な職員を置くものとする。」と規定するが、同法附則2(専門職員についての特例)において「当分の間、地方公共団体が設置する公文書館には、第四条第二項の専門職員を置かないことができる。」と記されたことから、専門職員の配置が義務づけられない状態が続いている。

この附則2は、内閣官房副長官による「公文書館法の解釈の要旨」(昭和63年<1988>6月)に「本項は、現在、専門職員を養成する体制が整備されていないことなどにより、その確保が容易ではないために設けられた特例規定である」と説明されるが、法成立からすでに35年が経過し、専門職資格および養成制度に大きな進展が認められる。

内閣府・国立公文書館は、「アーキビスト(専門職員)の職務基準書」(令和元年<2019>)をまとめ、翌年度から「認証アーキビスト」資格制度を導入し、知識・技術、経験、研究能力についての要件を充たす者をアーキビストとして認証することを開始した。これによりすでに247名が資格を認証され、今後も制度的に毎年認証されていくものであり、公文書館法附則2でいわれる状況は克服されつつある。

一方、養成については「認証アーキビスト」制度が公的な資格制度として導入されたことにより、従来から専門職員の教育養成を行ってきた国文学研究資料館・国立公文書館・学習院大学に加え、近年、大阪大学・島根大学・東北大学・昭和女子大学・中央大学などの大学院が、専門職の資格取得を目指したコースを設け、教育を開始している。さらにアーカイブズ関連の各種学会も複数創設され、学術的な成果も膨大になっている。

公文書館法附則2の存在は、こうした大学や関係諸機関の取り組みの足枷となるものであり、今後、専門職の採用を検討している自治体等の動きを躊躇させる要因となりかねない。附則2のすみやかな撤廃と、専門職員の配置を進めるための方策を強く要望するものである。

本要望書は、日本歴史学協会・日本学術会議史学委員会等が主催したシンポジウム「アーカイブズ専門職問題の新潮流」(2022年6月25日)での議論を受けて提出するものである。


令和4年(2022)8月4日


日本歴史学協会 会長 若尾政希